![]() |
| 「携帯電話の基地局アンテナを考える」 − 2001年1月15日 掲載 |
イギリスの教会が、携帯電話の基地局のアンテナとして尖塔をレンタルすることを決めたという(2000年12月2日付、朝日新聞)。 携帯電話会社としては高いタワーを立てる必要はないし、教会側も電話会社から年間約50万円の収入が得られるというメリットがある。イギリスには約5万の教会があり、尖塔の多くは高台にあったり住宅などの高さよりも高いから、移動体通信の中継基地局として利用するには都合がいい。すでに美観を損なわないように、旗竿や避雷針に似せたアンテナも開発したという。 一般に基地局のアンテナは、鉄骨を組み合わせたヤグラの上にアンテナ素子を取り付けたものが多いが、スマートなポールの上に巨大なキーウィフルーツを縦にしたようなカゴ状の部分に送信部を取り付けたものもある。 コミュニティの景観や環境保全に対する考え方は、ヨーロッパでは厳しい。スイスなどでは、家を建てる前に敷地の中の建物を建てる位置にアルミ製や竹竿のような簡単な棒を立てて、建てようとする家の位置や大きさ、高さがひと目で分かるようにして、近隣の住民の合意を得る期間を設けることが義務づけられている。スイスやドイツでは山中を縫って建てられている高圧線の鉄塔や鉄道の送電線の支柱も茶色、いわゆるアースカラーに塗られている。イギリスでも、たとえ塀であっても、ペンキを塗る前に色を近所に伝えて賛同を得ておかなくてはならない。 フランスのパリではネオンサインや電光掲示板で使う色が制限されていて、青や白などの目立たない色しか使えないそうだ。だから、JALやマクドナルドのマークでは、商標として正しくは赤を使うべきなのだが、パリでは白しか使えない。点滅したネオンも禁じられているという。中世の面影を残した市内の大理石のビルも、10年に1回以上は外壁を洗って美しく保たなくてはいけない。 フロリダのディスニーランド近くの国道のそばには、ミッキーマウスの顔がペイントされた給水塔があるそうだ。給水塔は単なる構築物にすぎないが、ペイントを工夫することによって親近感が出てくる。海外では美しい景観や環境を保持するために日本では考えられないほど厳しく規制されている。 日本でも最近は、主要都市のメインストリートでは信号や照明塔の支柱、さらに歩道の植え込みの中などの立てられた管理、制御箱なども茶色に塗られている例も増えている。住宅街に、見るからに鋼鉄製の冷たい雰囲気のアンテナ鉄塔を建てるのではなく、何か生活に溶け込んだ景観にするひと工夫はできないものだろうか。 京都などでは古都保存条例で、一部の地区では携帯電話などのアンテナを設置することが禁じられていて、その地域の外のタワーから電波を飛ばしている。三重県津市にある新興住宅地域では、家屋の屋根の上にテレビのアンテナを立てることが規制されており、その地域では共同溝やCATVが利用されている。 以前からアメリカでは、大きな樹木の形をした基地局アンテナが設置されていたが、国内でも「エコ・タワー」や「エコツリー」と称して擬木形の基地局アンテナが販売され始めている。遠くから見ると高い杉木立のようで、送信アンテナの素子は木の葉の部分に隠れていて目立たない。 携帯電話のアンテナが景観のすべてではないことは言うまでもないのだが、われわれはもう少し景観に関心を持つべきではないか。企業の社会的責任が企業価値、ブランドイメージを生むとして重視されるようになり、最近では廃棄物を中心とした環境問題への取り組みも注目されはじめている。いずれ近いうちには、「景観にやさしい電気通信事業者」も、社会から期待されるようになるにちがいない。
|
| HOME / トップへ戻る / 新しい記事へ / 過去の記事へ |