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| 「仕事を生かすも殺すもEメール次第」 − 2001年2月12日 掲載 |
経営組織は「ヒト・モノ・カネ」で成り立っていると言われ、最近では、これに「情報」が加わることも多い。しかし最も重要な財産は、“時間”であることを忘れてはならない。 この時間という財産は二度と再び取り戻すことはできない。大企業にも個人企業にも分け隔てなく与えられ、手に入れるのに投資は不要だが、在庫しておくことはできない、実に貴重な財産だ。人や物が動くとコストがかかり、同時に時間という財産も消費されてしまう。ドッグイヤーともいわれる今日、この財産を有効に使う工夫が、ますます重要となっている。その方法のひとつが、電子メールといえるだろう。 学生時代にやり取りしていた私的メールとビジネスメールは、「お手紙」と「文書」との違いと同じように、性格も目的も全く異なる。だが、経営組織に大きな影響力を持つビジネスメールでありながら、文章スタイルや処理方法についての議論がほとんど聞かれない。“気楽なおしゃべり”の延長でやり取りをしているのが現状で、成り行きまかせになってしまっている。 ビジネス・コミュニケーションの主流が電話から電子メールに移った現在、肉声による電話や対面コミュニケーションよりも、メッセージングの本質に関心を移すべきだ。1人1台のパソコンが配備され、手軽なコミュニケーション手段を手にし、その存在を改めて意識しなくなった今日、ビジネス・コミュニケーションの中核と位置づけて考えるべき段階に来ている。もはや、経営管理や組織管理などの視点から論じられる必要がある。 ビジネスメールでは、機密保持やインサイダー取引、リーダーシップ、人間関係、危機管理、ブランドイメージ管理などの点に関しても配慮をして処理をしなくてはならないはずだ。契約や取り引きに触れた内容によっては、監査対象ともなる。メールを活用することによって、消費者や社員、株主、取引先、販売代理店、コミュニティなどの、いわゆる「ステーク・ホルダー」との意志疎通の円滑化も図れる。 「業務の現場の情報がトップに届かない」「トップの意志が社内の末端にまで伝わらない」「情報の共有ができない」「地方の営業所や海外駐在員などの離れた場所との連絡が取りにくい」・・・・などは意志疎通の永遠の課題でもあるが、電子メールの力でその解決の糸口をつかみたい。 昨今、電子メールを使った内部告発や情報漏洩、特定企業に対する攻撃などの事件が目立っている。これに対して、適正な“初動処置”を怠っては問題の傷口を深くしてしまい、社会問題にまで発展させてしまう。以前の手紙や電話、対面が中心であった時代とは異なり、アッという間に広範囲に情報が伝播されてしまうから、社内の関係部署の密接な連携と速やかな対応が不可欠だ。まさしく“時間との勝負”になる。 モバイルコンピューティングの利便性が強調されている。そのメールが、オフィスや自宅、公園・駅のベンチ、海外の出張先など、どこから発信されたにせよ、業務としてやり取りする以上、受け取った人は発信した場所には関係なく、ビジネス上のメッセージとして内容を受け取るはずだ。出先から急いで打ったメールだからといって、粗雑な表現は許されない。感情に走ったメールが、えてして両者にシコリを残してしまうことがある。 かつて商社や一般企業の国際取引部門を中心に、海外との連絡手段としてテレックスが定着していた。国際電話と比べて通信料が安く繋がりやすいこと、相手の勤務時間を気にせず時差を利用して連絡が取れること、送受信のメッセージの控えが残ること、送受信の直後に控えのコピーを取れば複数のメンバーが速やかに情報が共有できること・・・・など、多くのメリットがあった。 最近まで発展途上国や先進諸国の地方都市との連絡に利用されていたが、昨今では電子メールにほぼ置き換わっている。電子メールは、このテレックス文化とパソコン通信の利便性を併せ持った意思疎通の手段と言える。色々約束事や決まり文句、省略形などがあり、テレックス全盛の時代には新入社員や国際関連部署のスタッフに対して研修も行なわれていた。 パソコン関連の多くの雑誌が電子メールを取り上げている、しかし“電子メール入門”の域を脱していない。新入社員に対して、電話のかけ方や話し方、挨拶状や書類の書き方、名刺の渡し方、応接室への来客の通し方、文書や資料のファイリング手法、上司に対する接し方・・・・などの教育をする企業は多い。しかし、電子メールのメッセージの書き方、送り方、メッセージの管理方法などを定期的に研修をしている企業は少ないようだ。上司に対して部下は「ホウ・レン・ソウ(報告、連絡、相談)が大切」と繰り返されていながら、電子メールを使ったその心得について詳しく論じた本に、筆者はまだ出会っていない。 「仕事を生かすも殺すも電子メール次第」というのは、決して大袈裟ではない。時間という天から与えられた貴重な財産を活用し、如何にして経営革新を図るべきか。電子メールという敏速なコミュニケーション手段で新たに得られた時間を、どうすれば経営革新に生かすことができるのか。ビジネスに携わる者はいま一度、電子メールの「本質」とは何かを問い直す時期にきている。
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