「サービス賠償責任保険の時代がやってくる」 − 2001年2月19日 掲載
 

ひとたび、電気、水道、運輸、電話、医療といったインフラストラクチャー(社会基盤)に問題が起きてしまうと、市民生活や経済活動に大きな影響を及ぼしかねない。残念なことに、通信ネットワークインフラに関連するトラブルが頻発し、毎日のように報道されている。

既存のインフラのサービスが途絶えても大きな混乱が起きるが、とりわけ通信インフラの場合には、ウイルスの侵入、プログラムのバグ、情報の漏洩、ファイルの消滅など、多くの固有の問題があり、しかも同時的に広範囲に渡って影響が出る性質がある。

加えて、いったん通信インフラがトラブルを起こすと、他のインフラにも直ちに障害を与えるため、社会機能をマヒさせ日常生活全体に大きな支障をきたす可能性がある。通信メディアをホビーなどの私的用途として使っているうちはキズは浅いが、ビジネスや公的業務にIT革命が浸透すればするほど、その影響度は計り知れず、組織の生命を揺るがしかねない。

破損されたデータやファイルの修復が不可能なことも多く、サービスそのものが停止されたことによってインフラの利用者が業務を継続できなくなる恐れもある。ネットワーク上のトラブル以外に、接続手続きやネットワーク機器の設置が遅れて事業が開始できず、倒産に追い込まれることも起こり得る。

すでに、商品という形のあるものが所定の機能を発揮しない場合には、“製造物賠償責任法(PL法)”で保護されている。他方、経済活動でインターネットや通信ネットワーク、コンテンツ、放送などのサービス産業の比率が大きくなり複雑化してくると、これらの形のない事業でも所定のサービスが得られない場合には、今後は、いわば“サービス賠償責任」(SL:サービス・ライアビリティー)”の考え方を導入すべきだ。

NTT-MEは99年10月から、通信業界で初めての「通信ネットワーク保険」の販売をしている。通信ネットワークが故障した場合に顧客が利用した代替ネットワークの費用などを補償するもので、顧客の逸失利益や第三者への賠償の一部を補償内容に組み入れたのが特徴になっている。また安田火災海上保険は今年の1月から、「商賠繁盛21(IT)」と呼ぶIT関連の中小企業を対象にした賠償責任保険を発売した。

後者は、ベンチャー企業が第三者に与えた、通信機器のトラブルやネットワークの中断による損害、データの破損や消失、情報の漏洩、著作権の侵害、人格権の侵害などにより、その企業が第三者から多額の賠償責任を問われたときに補償しようというものだ。また、補償制度がないと新規参入の妨げともなる。この賠償責任保険は、インターネット接続サービスやシステムインテグレータ、コンテンツプロバイダーなどを対象に損害を補償するもので、初めてのIT関連ベンチャー向けの賠償パッケージだという。

サービスを選択する際には、現在はサービスの内容や料金、実績、ブランド力などが目安となっているが、今後は、「サービス損害賠償責任保険が充実しているから、ここに決めた」という視点が増えるにちがいない。ただ責任の範囲、賠償額の算定方法など、議論すべき難題は多そうだ。

「回線がつながりにくくなっています。ご迷惑をお掛けしています」といった気楽な対応では済まされない時代が、すぐ目の前に迫っていると覚悟すべきだろう。

 
  HOME /  トップへ戻る / 新しい記事へ / 過去の記事へ