「“ディジタルデバイド以前”に考えること」 − 2001年3月26日 掲載
 

IT革命の進展とともに、“ディジタルデバイド”の拡大が深刻な社会問題になると指摘されている。政府がIT国家の構築を目指してまとめた「e-Japan構想」をはじめ、ディジタルデバイドの格差是正を盛り込んだIT関連の計画や構想が目立つ。政府の平成13年度予算でも、多額の対策費が計上された。

さて、ディジタルデバイドの解消は本当に可能なのだろうか。私は、競争原理を基本にして経済発展を推し進める限り、格差の拡大は“永遠に不滅”だと確信している。

単にディジタルデバイドといっても、地理条件や地域、可処分所得、世代や年齢、障害者と健常者、学歴・・・・など種々の要因で格差が生じてしまう。事業者が提供する回線の帯域幅や、回線数といったネットワーク能力の格差も見逃せない。

「ネットワーク時代やブロードバンド時代は、競争政策、競争原理を基本としてこそ拡大発展が可能だ」と言われる。しかし、この競争政策は、ある意味で「儲かる市場だけに絞って、事業展開することを認め合う」ということだ。事業者は規模が大きい市場を優先し、集中と選択によって事業を営むのは当然だろう。

その結果、都市部に多くの事業者が参入し、熾烈な価格競争や伝送速度競争、サービスメニューの多様化、ユーザーの奪い合いなどを繰りひろげる。他方、経営効率が悪い地方都市では、参入事業者が少なく価格も下がらないし、ネットワークも使いづらい。最も市場性の高い世代に焦点を絞ってサービスを行い、人口が少なく事業効率の低い障害者は後回しになってしまう。「効率の悪い地方都市は後回しにして、大都市だけで事業を展開したい」・・・・というのが事業者の本音だろう。

筆者は、“アナログデバイド”を見落としてはならないと考えている。つまり、ディジタル化される以前のアナログ中心の時代から情報格差は存在していた。少し地方都市へ行くと、新聞の夕刊がなかったりする。大手の新聞でも、県庁所在地の版のラジオ・テレビ欄の番組内容でさえ、電波の届かない遠く離れた大都市の局のもので、地元のテレビ局の番組表が掲載されていなかったりする。テレビのチャンネルも、NHKの総合と教育、それに民放が2、3チャンネル程度しか見られない地域も多い。

地方都市では駅前の本屋も少なく、読みたい新刊書が配本されにくい。講演会や展示会の開催が少なく、集客力のある地元タレントや人気学者も来てくれない。また、地元メディアに対して広告を出稿する企業が少なく、メディア事業は成功しにくい。「情報を発信することが重要」などと声高に言われるが、地方には、歴史や伝統、事件・事故といった地味なネタ以外、“全国区”になるような明るくて前向きの情報に乏しい。すなわち、地方都市の情報力をパワーアップするのは、容易ではないということだ。

我々は、「いつでも、どこでも、手軽に情報が得られる」インターネットという手段を手に入れた。しかし本当に重要な情報は、キーパーソンに直接会って生の情報交流をしてこそ、自分のものになる。残念なことに、地方で暮らしていると、そういった人に出会うには時間的、経済的、体力的に大変な努力が必要で、どうしても生の接点の機会が少なくなってしまう。その結果、情報過疎化してしまい情報リテラシー能力も向上しにくくなる。つまるところ、情報格差は解消できないということになる。

「収穫逓増の法則」は、情報通信サービスの自由化や競争政策にも合致し、不幸にしてディジタルデバイドをよりいっそう拡大させる。そうしたなかで、アナログデバイドが今なお一掃できないのに、ディジタルデバイドが解消できるとは考えにくい。アナログデバイドの主因である文化格差、社会インフラ格差を解消せずして、ディジタルデバイドの格差是正ができるのだろうか? 大金を投じてIT講習を開いたり、自治体がホームページを開設して情報公開をしても、地域間の格差は容易に縮まらない。

もちろん、筆者は格差の存在や拡大を望むものではない。当コラムの読者諸兄のご意見をぜひ聞かせていただきたい。

 
  HOME /  トップへ戻る / 新しい記事へ / 過去の記事へ