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| 「ディジタル時代の“ドキュメント・ポリシー”」 − 2001年4月9日 掲載 |
「捨てる技術」(辰巳渚著、宝島新書)という本がベストセラーになっている。そのことは、物を捨てるという行為に対して多くの人が悩んでいる証に違いない。「“情報”を捨てる技術」という行為も、物を捨てるのと同じか、状況によってはそれ以上に難しいテーマだ。 オフィスに保管されている書類やファイルが増えると、必要な資料を探し出すための労力的、時間的なロスが発生して大きな問題だ。それを少しでも効率良くするためにファイリング事務作業にコストを投じることになるが、特に企業の間接部門では大きな課題となっている。だいいち、情報量の増加とともにオフィスが狭くなり、デスク回りが雑然とするから、仕事の能率からすると紙情報の肥大化は好ましくない。 IT化によって1人1台のパソコンが導入され、その結果として職場環境がスッキリしたかというと、書類やキャビネットが減ったわけでもなく、デスクの回りには、パソコン本体のほかマウス、ケーブル、フロッピー、スキャナー、モデムなど増えて、かえって雑然としたようにさえ映る。パソコンに保管した情報が増えても見た目には変化はないが、1台1台のパソコンの中では玉石混交の情報が山積し、ゴチャゴチャになりがちだ。 ある小さな企業の経理担当者が退職するとき、パソコンに記録されていた経理データを勝手に削除して辞めてしまったという話を耳にした。上司との折り合いが悪く、いわば腹いせにやったのだろう。幸いにも、苦労して何とか経理データは修復できたそうだが、それ以来、重要なデータは別の場所のパソコンへバックアップ用として毎日転送することにしたそうだ。 別のある企業では、税務申告などに必要な会計帳簿データや事業の柱であるソフト作成は、ネットワークに接続していないオフラインのパソコンで処理し、メールのやり取りやファイルの交換だけオンラインのパソコンを使っているのだという。外部からウイルスやハッカーが重要な電子データに侵入するのを防御するためだ。 電子メールに限って議論をするとすれば、受信簿/送信簿などの暫定的情報とメールボックスに分類保管された体系的情報、またゴミ箱に放り込まれた不要情報などに大別できる。性格の異なるこれらのファイルを、どう扱うのが適正なのだろうか? 私は誰からも指導を受けたことはないし、指南してくれる本も見たことがない。ファイルの管理は、ほとんどの人は“我流”で処理しているのが現状ではないだろうか。 先日の4月1日、米軍の電子偵察機が中国軍の戦闘機と南シナ海上空で接触する事故が起きた。偵察機が中国の海南島に緊急羽着陸した直後に米国ペンタゴンが心配したのは、「偵察機の乗員が機内に残されていた機密データをどう処理したか」だったという。規則では緊急時には機内を小型爆弾で破壊することになっていて、出動前には毎回リハーサルをしているそうだ(4月5日付朝日新聞)。 一般企業においても、データファイルの管理体系は危機管理の点からも極めて重要なはずだが、その意識は全社員や関係者に周知徹底されているのだろうか? 最近では、使わなくなったパソコンのハードディスクに記録された情報が、中古市場に出回っているパソコンに完全に消去されずに残されたままになっていることが問題化してきている。 同様に、社会や経済の環境の変化に柔軟に対応することも求められている。昨今では珍しくなくなった銀行などの大型合併でも、ファイルやコード体系のシステム統合が合併の公表から合併当日までの短期間にできるのかは、コストの点も含めて重大な問題だ。 組織改革、分社化、人事異動、退職、OA機器の入れ替えなど、ファイルに影響を及ぼす要素は多くなる一方だし頻度も高くなるにちがいない。これまでの文書や資料といった紙媒体に特化した管理手法である“ファイリング”の考え方を継承するのではなく、IT化時代の新たな“ドキュメントポリシー”、つまり電子化された情報のファイル管理技術を確立することが急務と言えよう。
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