「管理職に求められる“イメージ・マネジメント”」  − 2001年4月17日 掲載
 

同じオフィスの中で仕事をしていると、コミュニケーションを直接しなくても、上司は部下の行動から仕事の状況や仕事の遂行能力を雰囲気的に察することができる。電話での会話のやり取り、行き先や来訪者の顔ぶれ、同僚との立ち話の時の表情、職場での人間関係、仕事をする仕草やテンポ、デスクの整理状態、書類の滞留状態、感情のコントロールなど、これらの視覚的情報から部下の仕事に取り組む姿勢や素養を評価することはできる。以前は管理職の視界の中にいる時間が長い部下ほど存在感が高くなり、ひいては人事評価や人物査定も高くなりがちだった。

経営の効率重視の時代を迎え、これまでの年齢や学歴に偏りがちな人事評価の制度が、成果主義に移行している企業が多い。売上高や生産高など、目標達成度が最も重要な指標となってゆく。成果主義が強調されすぎると、同僚を出し抜いてでも業績を上げようとする力が働きかねない。

インターネットがビジネスの中でもフルに活用される時代となり、必然的に、上級管理職の資質も変わることが求められる。部下が視界の中にいないとなれば、日頃の電子メールのほか、日報や月次業務報告や売上伝票などの情報が評価基準の数少ない拠り所となる。したがって組織を活性化させ正しい評価をするためにも、上司は、個々の電子的コミュニケーションのやり取りには従来以上の気遣いをしなくてはならない。

「組織構築の考え方がピラミッド型からフラット型、マトリクス型に変わると、組織のスリム化が進み、中間管理職が不要になる」と言われる。今や従来の「年齢」「経験」「社歴」「学閥」「閨閥」・・・・といった部下に対する上司の“管理力学”は、もはや通用しない。ほとんどの日本の企業のオフィスでは至極当然のように、管理職が窓や壁を背にして座り、全ての部下が自分の視界に入るようにレイアウトされているが、その意味も薄らいでゆく。

バーチャル組織(仮想組織)やモバイルコンピューティング、テレワーク、SOHOでは、常に同じオフィスで仕事をしているわけではないから、部下が管理者の視界の中にいない時間が増え、部下の執務態度を評価するに必要な多くの情報が入らなくなってしまう。放置しておくと組織の上下間やスタッフ間の対面コミュニケーションや上司の視界情報が減少し、組織の内外との有機性が低下し、組織の活力が弱くなり、経営効率が低下してしまう。

言ってみれば、対面コミュニケーション依存型から、液晶画面を介するだけの“平面コミュニケーション”依存型になってしまう。これでは動機づけをするにも、旧来のような“ニコポン”(ニコッと笑いながら肩をポンとたたいて部下にやる気を起こさせる方法)は不可能だ。

部下のコミュニケーション能力を高め、評価する能力も上級管理者の重要な資質であるとともに、管理者にとっての評価基準でもあることを再確認しておくべきだ。これからの管理者には、視覚的(ビジブルな)観察力だけに頼ることなく、視界には入らない(インビジブルな)部下の執務状況を頭の中に描き、リーダーシップを発揮し人事評価する "イメージ管理能力”が必須の資質となるだろう。

 
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