「“公衆パソコン”の利便性と危険性」 − 2001年4月23日 掲載
 

つい先日、今年の始めに香港へ出張した知人の話を聞いた。何も知らずに予約を入れておいたビジネスホテル・・・・ビジネスの中心街にある標準クラスのホテルのようだが・・・・の部屋には、各部屋にパソコンが置いてあったそうだ。

チェックアウト時に分かったことだが、使用料は無料。パソコンには、あらかじめメールアドレスが付与されているから、アドレスの登録もインターネットへの接続設定も、モジュラージャックへの接続といった手間は要らない。チェックインを済ませて部屋に入るなり、ただちにマイクロソフトの電子メールのソフトである「Outlook」を使って、自分のデスクと同じように全く違和感なくメールのやり取りができたという。もっとも、英語しか使えないという不自由さはある。パソコンに接続されているFAXを使えば、プリントアウトもできる。

自分のオフィスに来たメールをホテルのアドレスへ自動転送するよう設定しておけば、会社のデスクにいるのと同じように仕事ができる。ブラウザを使って近くの地図を検索したり、訪問先の下調べをしたり、観光案内を検索したりしたが、レスポンスも早かった。普段使い馴れているパソコンとは機種が異なるので多少勝手は違ったが、置かれていたパソコンは市販のものでWindowsタイプだから、試行錯誤しているうちに馴れた・・・・といった体験談を聞かせてくれた。

何といっても、海外出張の時に日本から重たいパソコンもACアダプタも持っていく必要がなく、身軽なイデタチで出張ができるし、旅立ち前の慌ただしさや長旅の疲れから解放されてホッと一息入れたい時、馴れない接続やら設定の作業をする煩わしさがないのがいい。

各部屋に使い放題のパソコンが置いてあるという“太っ腹”な日本のホテルを、筆者はまだ耳にしたことがないのだが、最近ではビジネスホテルの宿泊者がパソコンをネットに接続しやすいよう、各部屋にモジュラージャック付の電話を置いたり、高速回線をひいたりしているビジネスホテルも増えてきた。

2年ほど前のこと、JR系ビジネスホテルの中吊り広告に、部屋の特徴として「各部屋にモジュラージャック付電話が備えてあります」というキャッチコピーがあり、時代も変わってきたと驚いたものだ。「1階にビジネスセンターがあります」というより、今では「何Mbpsの回線が各部屋で使い放題です」という方が魅力がある。

誰でも使える“公衆パソコン”で心配なのは、「情報の機密保持がどこまでできるのか」という点だ。つまり、チェックアウトをする前にパソコンの中の「ゴミ箱」に残っているメールを全て削除したとしても、ハードディスクから完全に消え去ったわけではないから安心はできない。見知らぬ誰かがメールや作成した文書の内容を解読し、情報をそのパソコンから取り出すかもしれないという怖さがある。したがって、あくまでも「機密情報は送受しない」ということを前提としたサービスと認識しておくべきだろう。そのことをわきまえていれば、便利なサービスだ。

皆が安心して使えるよう、「飛ぶ鳥跡を濁さず」の如く、ボタン一発でパソコンやサーバーの中に残った全てのユーザーエリアが完璧にクリアされるような、“一見さん”向けパソコンを置いておいて欲しい 。似た例としては、海外旅行者向けの携帯電話のレンタルサービスも挙げらる。その利用も増えているが、自分で内部登録した電話番号も消してから携帯電話を返却することを忘れてはいけない。

それはともかくとして、海外出張をした時に仕事で忙しいのは仕方ないが、ホテルの部屋にこもってパソコンとニラメッコをして、自分のオフィスと同じように仕事をすることが、果たして本来好ましい姿なのだろうかとも思う。時間と心に余裕を持って、現地の生活様式を感じ取ったり、博物館や美術館、名所旧跡を訪れたり、現地スタッフの家庭を訪問して親交を厚くする・・・・といったことは、自らの見聞を広げ、自分自身の人生にとって貴重な“肥し”になるはずだ。

 筆者自身は、パソコンという文明の利器に24時間振り回されるのを避けている“IT保守派”である。

 
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