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| 「小泉内閣のメルマガ発行が意味するもの」 − 2001年7月2日 掲載 |
「小泉内閣メールマガジン」が6月14日にスタートして、28日に3号目が送られてきた。定期出版物などは、「だれがやっても、3つ目までは何とかなる」ものだが(これを業界では『3号雑誌』と呼ぶ)、これからが勝負で、実力が試される。 テレビを見ていると、「小泉さんからメールが来た!」とおお喜びする茶の間の風景が映し出されていた。ある人が奥さんに、「メルマガに登録をしたら、小泉さんからメールが来た」と報告すると、奥さんに、「小泉さんの後援会に入ったの」と聞かれたという。 小泉首相がインタビューで、「メルマガの登録者が多くなり、政治に関心を持つ人が増えた」と答えていた。そう判断するのは早計だと思うが、中央政府と国民との距離を短くしたことは確かなようだ。またインターネットやメールマガジンの存在を、年齢や幅広い各層の人々や、ITに背を向けていた人々にも関心を持たせた。しかも、一般家庭の日常生活にまでITを浸透させることに貢献したことは否めない。 物事を初めて行なう時には、必ず反対意見が出て、足を引っ張る人がいる。「小泉メルマガ」にも多くの反論があり、確かに1億円もの国家予算を費やし、多くの公務員を張り付けて、個人的意見などを全国へ流布することに疑問も残る。しかし、行政機関の広報活動や情報開示のありかたに先鞭をつけたことには評価すべきだろう。これまでの“読まれもしないチラシやパンフレット”を、洪水のごとく送り出すだけで「国民には情報を開示している」という姿勢からすると、大いなる進歩と言える。 200万を超す登録者を確保したということは、「数は力なり」となり、政治力を持つことに繋がりかねない。心配なのは、政府機関や政党などの横やりによって、メルマガの内容が徐々に偏向していき、プロパガンダや民衆に対する政治工作に繋がって行くことはないかという点だ。 これは、我々の血税で運営されている広報活動なのである。仮にプロパガンダではないにしても、都合の悪いことを美しく包み隠したり、自らの主張を正当化するために利用されるようなことがあってはならない。政府がマスメディアを介さずに、公衆に直接訴え掛ける手段を掌中に収めたということは、強力な政治的武器を獲得したことになる。 言い換えれば、「政府直轄の全国放送局を開局」したも同然だ。つまり、全国紙の政治面やテレビのキー局の報道番組と同様に、不偏不党のジャーナリズムとしての報道の倫理観や使命感をもって運営し、決して「永田町の論理」に流されることなく発行に臨んでいただきたい。インターネットという通信メディアでありながら、実態は政見放送と変わらない機能を持っている。このメルマガの人気を契機に、放送法との絡みの問題が浮き彫りになっていきそうだ。 また、メルマガの主催者である内閣官房内閣広報室が意図するか否かは別としても、7月の参議院選挙を前に、直接的あるいは間接的に、公職選挙法に抵触することはないのだろうか。メルマガの読者は自分の意志で登録し、主催者も登録をメールで確認している。だから、政府と登録者との「1対1の双方向の関係」が成立しており、登録者である選挙民に向かって個別に意見を申し述べている形態となっている。不特定の大衆に向けてメールを一方的に送り付けたのではない点が、従来の駅などに置かれた政府広報紙の延長線上とは基本的に異なったスタイルの“文書”だ。 国家が、200万を超す個人アドレス(言い換えれば、有権者と直接コンタクトができる手段)を本人の了解の下に所有できたことは、恐らく歴史的に類例がないだろう。逆にいえば、それだけ慎重な管理運営をしてもらわないといけない。 恐らく「小泉メルマガ」は、小泉内閣が解散した時点で閉鎖することになるのだろうが、この膨大な数の個人情報としてのアドレスは、その後はどう処理されるのだろう。多くの人は、“小泉さんだから申し込んだ”と思われるが、登録者の大半は、次なる内閣に自動的に継続されることなど意図していなかったはずだ。 閉鎖後、アドレスは直ちに消去されるものと信じているのだが、どうなるのだろう。このアドレスのデータベースは、“政治家の先生方”にとってはノドから手が出るほど欲しい“宝物”に違いないが、他に流用されることなど、絶対にあってはならない。 日本では最大級のメルマガになったが、規模の大きさだけを誇らしげに吹聴するのではなく、政治の風透しが良くなり、また全国各地の自治体の広報活動の手本となるよう、健全なメルマガに成長していただきたいと願っている。
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