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| 「メールアドレスと社会人の常識」 − 2001年7月9日 掲載 |
「インターネット白書2001」によると、日本のインターネット人口は2月末で3,264万人を超えたという。仕事で交換する大多数の名刺にはメールアドレスが記載され、業界などの会合の名簿にも、社名や電話番号と並んでアドレスの欄が設けられることも増えている。IT関連の展示会の入場登録票や会社のPR誌の購読申込の葉書にも、アドレスの記入欄を作っている例も多い。 これだけアドレスの流通が一般化すると、それが知らぬ間に公表される可能性も高くなり、同時に弊害も増えてくる。ややもすると、メール文化がマイナスイメージを持つことになる。 雑誌や新聞で「電子メールをやり取りする時のマナー」が取り上げられることも多く、「個人のアドレスを、無断で他人に教えてはいけない」などとアドバイスをしている。全くその通りと思うのだが、現実には無神経な人が多い。 仕事柄、通信に関連する各方面の方々が参加する会合に名を連ねたりすることもあるのだが、これらの会合の開催通知や議事録、メンバーの変更などのメールが、20人も30人ものアドレスを並べて送られて来ることが頻繁にある。ヘッダーの宛先欄だけで画面一杯になることすらある。 実は、こういった会合に参加している人は、大手有名企業や団体などに所属し、管理職レベルの人が多く、男性が多数を占めている。別の角度から言うと、これらの会合のメンバーのアドレスを手に入れると、パンフレットの郵送などと比較してずっと安いコストで、対象を絞ったDMが打てる理屈だ。ゴルフの会員権、財テク、不動産などのセールスに絶好のターゲットなのである。 アドレスは、すでに名簿図書館で売られたりしているほか、無料のグリーティングカードの仲介やアンケートの応募と称して収集しているケースもあると聞く。つまり、メールアドレスに市場価値があり、流通していることになる。 筆者が仕事で使っているパソコンの「受信簿」でさえ、大手企業の紳士諸氏の何百ものメールアドレスが蓄積されている。もしも私の“心の中の悪魔”が首をもたげて来て、私が仕事を通じて手に入ったメールアドレスを市場に売りに出せば、かなりの副収入が獲得できるに違いない。収入については個人の問題ですむのだが、自分のアドレスを無断で市場に流布された“アドレスの持ち主”にしてみれば、多分に迷惑だ。回収するすべもない。 2年ほど前に、情報通信に関連する公的な国際会議に参加したことがある。それから半年ほどして、海外から得体の知れない勧誘メールが届きはじめた。世界の通信業界の調査報告書を「あなただけに格安で提供する」とか、エグゼクティブメンバーによる「ごく限られた情報交換会に参加せよ」とか・・・・・。オイシイ語り口で呼びかけてくる。事前登録の時に提出した資料が外部に流れて、そこに記載されたアドレスが市場に出てしまったに違いない。 先日、ある会社を辞めた若手の営業担当の男性から、退職に際しての挨拶メールが来た。よく見ると、宛先の部分に何十人もの知らない人のアドレスが並んでいる。さらによく見ると、大手企業の女性と思われるアドレスが多い。彼は、どんな営業活動をしていたのかと不思議にさえ思えてくる。交友関係を自ら暴露してしまった。しかも、大手企業に勤める何十人ものOLのアドレスを、本人に無断で公表してしまったわけだ。言うまでもなく、これらのアドレスは bcc の欄に書くべきだった。 確かに電子メールは、「手間もコストもかからない、手軽なコミュニケーション手段」だ。しかし少なくともビジネスでメールを利用する時には、「あまり硬く考えずに、楽しく使うことが許される世界」とは決して考えてはいけない。かつてのパソコン通信の時代には許されても、今は違う。休日に自宅でやる仲間同士のチャット感覚とは、頭を切り替えて仕事に臨まなくてはいけない。 概して、メールのアドレス欄の記載には、配慮が足りないと思っている。無神経と言っても良いだろう。そのメールを、その人に送るべきか、送るべきでないか。メンバーがアドレスを互いに知っていた方がいいのか、そうでないのか、きちっと判断をしなくてはいけない。社会人の常識として、礼儀やビジネスルールをわきまえなくてはならないのは、電子メールと言えども、面談や手紙、書類、電話、FAXなどと、なんら変わるものではない。
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